川の水の流れってどうなっているの?

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これは大学で学ぶ水理学の一大テーマですが、思い切った簡略化で流況シミュレーションに必要最小限の内容にし、実際の河川と対比して理解できるように説明しています。

教科書でまず習う流れは・・・

教科書でまず習う流れって、下図のようなものではないでしょうか。幅も水深も流速も勾配も一様のこのような流れは等流といいます。このような流れなら、水深や流速は、流量と勾配・粗度(川底の粗さ)を使って簡単に計算できます。でも、実際の河川で等流で流れている場所はほとんどありません。(人工水路ならあるかもしれませんが・・・)

等流状態の流れ
等流状態の流れ

実際の川の流れは・・・

実際の川の流れは、下図のようではないでしょうか。堰の背水部と書いてある部分の水深は勾配でも粗度でもなく、堰の高さで決まっていますよね。堰ほど目立ちませんが、淵と書いてある部分の水深は堰の背水部と同じように瀬と淵の間にある浅い部分の高さで決まっています。

一方、堰から落ちていく水の部分の水位は、これもやはり、堰の高さで決まっています。瀬の部分もそうです。つまり、堰や、瀬と淵の間の高くなっている場所に、上流側の水位と下流側の水位を決定している断面が存在していることがわかると思います。これが支配断面です。

支配断面の水位は、その断面の状態と流量だけで決まり、上下の影響を受けません。支配断面の水位の影響を受けて上流に向けて水位が決まっていく流れを常流といい、支配断面の水位の影響を受けて下流に向かって水位が決まっていく流れを射流といいます。

また、堰から水が落ちて下の水に当たるところで、白波が立つ部分がありますね。その部分を跳水といい、射流から常流に遷移する部分で発生します。

実際の川の流れ
実際の川の流れ

流れ方の知識をシミュレーションにどう生かす?

iRIC/River2Dの境界条件として、下流の水位を与えないといけないことを覚えていますか?射流部分は流速も速く、また実際の河川では川底の凹凸などで射流・常流・跳水が混在した複雑な状態になっていることが多いです。そのような場所の水位は、計算で求めることはもちろん、実際に測定することすら簡単ではありません。一方、常流は穏やかで、水面勾配も小さいことが多く、水位が安定しています。ですので、シミュレーションの下流端はできるだけ支配断面か、少なくとも常流部に設定したほうが良いのです。上流端については流量を与えるだけですから、その意味では常流でも射流でも同じなのですが、やはり射流部分は計算も安定しにくい(発散や振動が起きやすい)ため、ただでさえ計算が不安定になりがちな境界部分は瀬には置かない方が無難だと思います。どうしても瀬から計算を始めないといけない場合には、わざと実際の地形とは異なる淵状の水路を上流部にくっつけて計算することもあります。

また、堰や滝の落水などの極端な射流部は、射流を計算できるソルバーでも計算に失敗することがあります。そのような区間は最初から計算対象から外してしまうことも考えた方が良いのです。

実際の川で常流・射流はどう見える?

実際の川の写真の上で、射流・常流・跳水が混在した部分を赤線で囲ってみました。

まずこの写真は、堰の背水部がよくわかりますね。堰からの落水は明らかな射流ですが、水たたきに当たって白波をあげている部分は跳水・常流・射流が入り混じっていると思います。この写真のような河川では、そもそも赤で囲った部分はシミュレーション区間から外した方が無難です。

堰での射流、跳水、背水部
堰での射流、跳水、背水部

次の写真で囲った部分は、射流部分がより不明瞭で・常流・跳水が入り混じっています。しかし一番手前の囲みの上流側に支配断面があることはわかりますね。この写真のように、実際の河川では常流区間と射流主体区間が交互に現れて流れていることが多いのです。この写真のような河川では、iRIC/River2Dのシミュレーション区間に囲み部分が含まれてもおそらく大丈夫ですが、上流端・下流端を囲みの中に置かない方が無難です。

自然河川の常流ー射流ー跳水
自然河川の常流ー射流ー跳水

これらのような等流ではない河川区間のシミュレーションは、ほとんどの場所の水位が支配断面を起点とした計算で決まるため、粗度を正しく設定するよりも、地形を適切に再現する方がはるかに重要になります。(ここで「正しく」と書かずに「適切に」と書いたのは、River2Dのような2次元シミュレーションでは、護岸とか岩の側面などの垂直に近い形状を「正しく」再現しようとすると計算が不安定になりがちだからです。この話題については別稿で触れます。)

イメージだけでもわかっていただけたら幸いです。Have fun!

iRIC/River2Dまとめ:河川の流れを計算する
無料の流況シミュレーションソフトウェアiRICが河川の流況計算を誰でも手の届くものにしてくれました。iRICの数あるソルバーの中でも生物生息場評価に適したRiver2Dを中心に説明します。

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