iRIC:River2Dの計算条件設定

River2D

計算条件設定も判断が難しいものが含まれています。一通り理解した上で、失敗を恐れず経験を積んでください。

iRICはフリーの河川数値シミュレーションプラットフォームです。

Calculation Type:基本的設定なのできちんと確認!

Calculation Type設定
Calculation Type設定

Calculation Typeというのは、このページ最上部の「Steady」ドロップダウンのことです。しかし、iRICのRiver2DはSteady(定常計算)しか選択できません。アルバータ大学オリジナルのRiver2DではDynamic(非定常計算)も選べます。

非定常計算とは、計算の進行過程の水深や流速変化も含めて現実を忠実に再現することを目指したもので、定常計算とは最終的に平衡に達した計算結果ができるだけ速く得られるよう、途中経過の再現性は重視していないものです。

開始時間、終了時間、時間ステップが数値計算で基本的に必要なことは既に記載しました。River2Dの特長は、計算が振動や発散しないよう、時間ステップが自動的に変化することです。そのために、初期時間ステップと最大時間ステップを定義するようになっています。Goal Solution Changeという値がどのように計算されているのか正確にはわかりませんが、イメージとして、ステップごとの計算結果の変化が大きいと、大きな値になります。その値が時間ステップ変更閾値に達すると、発散を避けるために時間ステップを小さくします。逆にGoal Solution Changeが小さくなると、時間ステップを大きくするのです。

開始時刻は特に理由がなければ0で良いです。終了時刻は、最初から大きくしていると時間ステップが極端に小さくなって止まらなくなってしまうことがあるので、最初は1000ぐらいで様子を見て、安定して計算できそうなら必要なだけ大きくしていきます。初期時間ステップは、計算が不安定そうなら小さくします。地形が複雑とか射流が多いとかなら0.1とか0.01から始めてもよいです。時間ステップ変更閾値は、あまり触らなくても良いですが、計算が不安定なら小さく、計算が安定していてスピードアップしたいなら大きくしてもよいでしょう。最大時間ステップも同様です。

最後の計算出力間隔は、1だと1ステップごとに結果を保存するのですが、計算ステップが小さくなると同じ時間計算してもステップ数が増えるので必要な保存容量が大きくなり、いろんな意味でPCがパンクするのです。ですから、時間ステップが小さくなるような計算や、終了時刻が大きい計算では、大きな値にした方が良いのです。

Solver Options:たぶん触らなくてもよいです

Solver Options設定
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実を言うとSKラボはこの項目を変更したことがありません。今後ここを変更する必要が出てきたらまた報告しますね!

Flow Options:瀬切れや岸と流心の流速差を制御

Flow Options設定
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風上係数は0から1の値で、非定常なら0.25、定常なら0.5が推奨されています。地下水遷移水深は、水深がこの値より小さくなると地下水流の式に切り替わります。地下水透過率は、地下水が表面流と比較して無視できるなら小さな値にします。地下水貯留係数は単位地下水面低下で面積当たりに浸透する水量で、1なら表流水と同じ、0なら浸透なしです。上図では1になっていますが、ちゃんと水がある川なら0でも良いと思います。渦動粘性係数ε1は河岸と流心の流速比率を調整するパラメータで、通常は0.01前後です。ε3についてはSKラボは変更したことがありません。

Initial Conditions:絶対忘れずまともな値を設定することが必要!

Initial Conditions設定
Initial Conditions設定

最上部のドロップダウンではNewかUse existing Solutionが選べます。Newは最初から、Use…は、次のHot Start Fileと組み合わせて別の計算の続きを計算できますが、SKラボはNewしかやったことがありません。いつか報告しますね!

絶対きちんと設定しないといけないのが、上流水面高初期値です。いちばん最後の項目なので設定しない初心者が多いですが、これを設定せずにうまく計算できたらそれは奇跡的に運がよかっただけです。この値は、Initial ConditionがNewの時、上流から下流まで、区間全体の水位(水深ではありませんよ!水面の標高です。)として設定されます。この値が流入端の河床高より低いと、境界条件で流量が与えてあっても水は流れません。いっぽう、この値が流出端の境界条件である水位より小さいと水が逆流しますし、大幅に大きいと津波のように水が流れ出て計算が発散してしまいます。特に上流端と下流端の標高差が大きいと、どんな値にしても発散してしまう恐れがあります。区間を短く切るとか、Use existing Solutionで少しづつ下流境界条件の水位を下げていくとか、工夫が必要でしょう。

よく理解して、上手に使っていきましょう。 Have fun!

iRIC/River2Dまとめ:河川の流れを計算する
無料の流況シミュレーションソフトウェアiRICが河川の流況計算を誰でも手の届くものにしてくれました。iRICの数あるソルバーの中でも生物生息場評価に適したRiver2Dを中心に説明します。

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